【推理小説感想】空中密室の謎に挑む「魔剣天翔」 森博嗣

エアロバティックス

森博嗣のミステリー小説Vシリーズ第5作目「魔剣天翔」の読後感想。空の密室で起こった殺人事件にいつもの4人が挑む!※記事中に一部ネタバレ考察があります。

作品情報「魔剣天翔」

あらすじ

航空ショーのアクロバット飛行中にパイロットがコックピット内で銃撃されて死亡する。しかし、そのパイロットは二人乗り航空機の後部座席に乗っていながら、背中から撃たれていた。殺されたパイロットと一緒に搭乗していた女性記者に嫌疑がかかるが、不可解な状況から事件は混迷を極めていく…。

シリーズのメインキャストである「瀬在丸紅子」「保呂草潤平」「小鳥遊練無」「香具山紫子」の4人が事件に関わっていくが、今作は特に保呂草と練無の二人が活躍!保呂草の裏の顔や、練無の一風変わった趣味(?)に関しても触れられていた。




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ネタバレ考察(開閉式)

※ネタバレ注意(ここをクリックして開閉)※

スッキリ解決!

飛行中にコックピット内で殺害された「関根勇輝」が背中から撃たれていたトリックについては、解決パートで探偵役の紅子が論理的な推理でスッキリ解決。更に、最初の事件の性質が明らかになることで、「布施健」が殺された2件目の事件も自然な流れで解明されて、事件のトリック関連については特に謎も残らず爽快な読後感だった!

入れ替わりトリックは、同乗していた「斎藤静子(各務亜樹良)」が曲技機から脱出する際の描写などもあって惑わされやすいが、"2番機に関根勇輝が乗っていた"という刷り込み(ミスリード)を看破できれば、シャーロック・ホームズの有名な台詞である「不可能を排除して最後に残ったものが、どんなに奇妙でもそれが真実である」的な推理方法で辿り着くことができた。

脅迫状の謎

保呂草がエアロバティックスのチームに送りつけたと思われる脅迫状に「各務亜樹良(かがみあきら)」の名前が織り込まれている、ということをエピローグで紅子が仄めかすが、全然分からなくて最終的にググって確認した(;´∀`)

カタカナで書かれた六行の脅迫状の各行末尾の単語を繋げると「キギムイクリ」となり、これを五十音図の一段上に置き換えると「カガミアキラ」となるんだそう。この謎解きに意味があるのかわからないけれど、単に保呂草の言葉遊びなのかもなあ。

登場人物について

今作は、保呂草が探偵&泥棒として事件に巻き込まれていく様がスリリングに描かれていて、読み応えがあった。また、性的志向がはっきりしない練無の女装趣味や恋(?)にも少し触れられていたのも興味深かったなあ。

しかし、それより気になるのが紅子の息子である「へっ君」の存在。「時代設定(70~80年代?)と舞台(那古野=名古屋、N大学など)」、「紅子には複数の人格が云々」、「へっ君と七夏の娘が腹違いの兄妹」、という要素を加味すると、どうもS&Mシリーズを連想してしまうなあ。

敢えてニックネームで本名が明かされない「へっ君」の正体は、S&Mシリーズの主人公「犀川創平(さいかわそうへい)」だったりするのかな?七夏の娘の名前が「世津子(せつこ)」だったら、ほぼ間違いないだろうなあ。続きを読むのが楽しみ!


★★★★☆

解決パート前に密室トリックを概ね解くことが出来て、犯人も推理どおりだったので、探偵役の紅子の解説を読むのが爽快でした(≧∇≦)/

今作は、各種の証拠を組み合わせていき論理的に事件が解決されるので、ここまで読んだシリーズ作品の中でも推理を楽しみやすい部類に入りそうです。森博嗣作品に「Why(動機)」を求めるのは野暮かもしれませんが、今作は何となく犯人の心持ちも掴みやすかったので、読後感が良かったのも印象的でした。




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