陸の孤島と化した山奥の研究所で起こる事件にいつもの4人が挑む!森博嗣の推理小説Vシリーズの第7作「六人の超音波科学者」を読んだ感想。※記事の一部に開閉式でのネタバレ考察があります。
作品情報
- ジャンル:推理小説、ミステリー、シリーズ物
- 著者名:森博嗣(もりひろし)
- サブタイトル:Six Supersonic Scientists
- 発売日:2004年11月16日
- 価格:713円(税込)
- ISBN-10:4062749238
- ISBN-13:978-4062749237
- 判型:文庫
- ページ数:424
- 初出:2001年09月06日(講談社ノベルス)
- 参考:『六人の超音波科学者』(森 博嗣):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部
作品内容
あらすじ
山中深くに築かれた超音波研究所内でのパーティに招待された紅子と練無。二人を送り届けるために同行した保呂草と紫子の4人だったが、研究所へと通じる唯一の橋は爆破され、パーティの最中には絞殺されたと思わしき科学者の死体も発見される。
紅子たちは真相究明に乗り出すが、第二の事件も発生して事態は緊迫。陸の孤島と化した研究所での長い夜が始まる…。
作品紹介
森博嗣の長編推理小説シリーズ「Vシリーズ」の7作目作品。アパート「阿漕荘」の住人を中心とするいつもの面々、自称科学者「瀬在丸紅子」、探偵「保呂草潤平」、女装癖のある医学生「小鳥遊練無」、長身ボーイッシュ女子大生「香具山紫子」の4人が事件に巻き込まれていく。
本作では、紅子と天敵(?)の関係にある刑事「祖父江七夏」も登場して活躍。周囲と隔絶した研究所で発生した事件の真相を究明し、橋が復旧して警察本隊の応援が到着する朝まで無事に乗り切ることができるのか。
本作は、夕方から翌朝までの半日間という短い期間の中で話が展開していくので、舞台効果も合わせたスリリングな展開が魅力的!
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ネタバレ考察(開閉式)
解決パートを読む前の推理
「スコット・ファラディ」と「土井 忠雄(どい ただお)」を殺害した犯人は「園山 由香(そのやま ゆか)」と推理。
ファラディ殺害については、そもそも第一発見者で一番怪しいのに加えて、現場がやけに綺麗で遺体発見時にファラディを訪ねた理由を聞かれた際も「通りかかった」と証言したのが気になった。パーティ会場では着ていなかった白衣を纏っていたことから、一度自室に戻ってからファラディの部屋を訪ねたとすると部屋の配置的に遠回りとなり不自然と考えた。
土井博士殺害については、少なくともパーティ開始前には殺害され頭部・両手首を切断されていて、遊戯室やパーティ会場に現れたのは頭部と両手首のみが本物の人形と推理。万一、本人確認が必要な状況に備えて頭部と両手のみは本物を用意し、右手は機械仕掛けで動かしていたと考えた(「すべてがFになる」の影響か)。
紅子・練無・七夏の三人が罠に嵌められた際に、練無がエレベーターに連れて行かれた理由は、纐纈老人の孫娘「苑子」に似ているという話から、エレベーターの「キー」の一つが超音波で「顔」をスキャンする事なのかな~、なんて思ったが全然違ってた。
動機は、土井博士を殺害後も生きているように偽装して操り、博士の莫大な個人資産を奪う事と考えた。博士の遺産が事件の動機になっている点は当たらずとも遠からずだったけど、ファラディは邪魔だから殺したのかな~程度の考えだったのでほぼ完全敗北(ノ∀`)アチャー
考察1:綿密なようで杜撰な計画
解決パートで紅子がしっかり説明してくれるので、動機、ファラディ殺害現場の不自然な状況、首と手首が切断された死体の謎、練無だけがエレベーターに連れて行かれた理由もはっきりする。
しかし、犯人たちの計画は紅子たちがいなくても、結局のところ成立しなかったようにも思える。土井博士の自殺と外部犯の犯行の両方を仄めかす偽の遺書があっても、ファラディの首切断と土井博士の首なし死体を両立させるためにはどちらかの遺体を不自然に消す必要があるし、目撃者の証言があっても総合的な状況から警察を煙に巻くのはかなり厳しく思える。
橋の爆破や急な催眠ガスの使用など技術的には凄いのかもしれないが、計画性や先見性には欠けている印象。
練無が危機一髪!
今作でピンチに陥る役は練無!紅子が人工呼吸をしているところに紫子が駆けつける場面は結構ショッキングだった。
S&Mシリーズではヒロイン西之園萌絵のピンチが定番だったが、Vシリーズでもやっぱりメインキャラクターが危険な場面に出くわすことが多くて盛り上がる!
特に根拠はないけれど、メインキャラクターが死にかける場面を読んで少し不安になってきたのが、林と紅子の命。「へっ君」が犀川創平で七夏の娘が「儀同世津子」だとすると、なんで「へっ君」の名字は「犀川」なんだろう…。紅子が再婚したとかなら良いのだけど、嫌な展開もありそうだな…。
練無の伏線
本作ではミスリードになっているぽい練無と纐纈氏(&孫娘の苑子)の関係性。練無の心のなかにある「まだ完全には治らない小さな傷」とは何なんだろうなあ。
感想:★★★★★
陸の孤島と化した山奥の研究所というクローズド・サークルを舞台に、夕方から翌朝までの戦慄の一夜が描かれているため、テンポよく話が進んで緊張感の途切れないハラハラ・ドキドキな作品でした。
事件に用いられたトリックも予想外で度肝を抜いてくれたので非常に楽しい内容でした。今回は謎解き推理で完全敗北だったので、次作では何とか謎を解いてみたいと思います。
- 前作感想:「六人の超音波科学者」
- 次作感想:「捩れ屋敷の利鈍」
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