【推理小説感想】「人形式モナリザ」森博嗣著

モナ・リザ

Vシリーズ2作目の推理小説「人形式モナリザ」を読んだ感想。※一部にネタバレが有ります。

作品情報

  • ジャンル:ミステリー、推理小説、探偵小説
  • 著者名:森 博嗣
  • サブタイトル:Shape of Things Human
  • 発売日:2002年11月15日
  • 価格:税込691円
  • ISBN:4-06-273585-7 978-4-06-273585-8
  • 判型:文庫
  • ページ数:416
  • シリーズ:講談社文庫
  • 初出:1999年9月(講談社ノベルス)

内容紹介

「乙女文楽」上演中、演者が謎の死を遂げた衆人環視の中、殺された女性の家族の1人が二年前に殺害されていた。被害者は悪魔を崇拝しており「神の白い手」によって殺されたというのだが…。シリーズ第2弾

引用元:『人形式モナリザ Shape of Things Human』(森 博嗣):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部

主な内容

避暑地で休暇を楽しむ予定だった主人公たち4人が、私設博物館「人形館」で起きる殺人事件に遭遇。衆人環視の中、犯人はいかにして被害者を殺害し現場から逃走したのかという、ハウダニット(Howdunit)がメインの作品でした。

更に、被害者の一族が二年前にも殺害され未解決となっていることが分かったり、近くの美術館で盗難事件も発生したりと、Howに加えてWhoとWhyの推理も絡めて楽しめる内容となっていました。




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ネタバレ考察(開閉式)

※ネタバレ注意(ここをクリックして開閉)※

考察1「Who?」:真犯人は?

「岩崎巳代子(みよこ)」。裏表紙にある「ラストの一行で、読者を襲う衝撃の真実!」もヒントになっているが、作中最後の「岩崎麻里亜(まりあ)」の台詞「お義母様」から、一連の事件の真犯人(黒幕)は麻里亜の義母「巳代子」だとみてよさそう。

麻里亜を洗脳することで、「岩崎雅代(まさよ)」殺害の実行犯に仕立て上げ、殺害時の証拠(操り糸)隠滅にも手を貸している可能性が考えられる。

麻里亜の証言から、2年前の「亮(あきら)」殺人事件の実行犯もやはり麻里亜で巳代子が共犯と思われる。「岩崎毅(つよし)」の毒殺については、毒を仕込んだのは巳代子か真里亜かはっきりしないが、状況からみて二人の内のどちらかと思われる。

考察2「Why?」:巳代子の動機

財産(遺産)目当て、もしくは岩崎家(義母・夫・息子)への憎悪?

財産目当ての線で考えると、岩崎家の人間を抹殺(麻里亜は殺人罪&洗脳で再起不能)することで、巳代子はかなりの財産を手に入れる事ができたと考えられる(モナリザも含めて)。「大河内弘樹」が語っていた、「優美や千沙にも遺産を受けとる権利が云々という噂話に困っている」というのは、ミスリードと同時に裏を返してヒントだったのかも。

憎悪の線だと、夫の毅は家にあまり帰らず家庭的でなかった(=夫婦関係は冷め、愛人がいた?[豊と千沙の証言])し、一人で訪ねてきた紅子を襲っている事からも悪辣な人間だったと考えられる。また、息子の亮も真里亜と付き合っていた時に二股をかけていたり(林の話)、オカルト・悪魔崇拝(真里亜や元恋人のA子に幻覚作用のある薬などを盛っていたかも?)などの悪癖があった。

さらに、林の話から雅代にもオカルト趣味があったと思われるので、雅代から3代に渡る岩崎家の面々(義母・夫・息子)が持つ邪な性質を巳代子は嫌悪していたのかも?しかし、動機については作中であまり掘り下げられないため、はっきりしない。

キャラクター

紅子は、複雑ではあるけれど随分"人間"ぽくなってきて、前作「黒猫の三角」の初見時に何となく想像したS&Mシリーズの「真賀田四季」的なスーパー天才キャラからは遠退いた感じ。それにしても祖父江七夏(そぶえななか)との対決(?)で、「私はね…、林のためなら、息子を殺すことができます。覚えておいてね」は衝撃的だった!作中終盤の様子からすると、そこまでドロドロした三角関係にはならないようだけど。

そして、保呂草潤平(ほろくさじゅんぺい)の怪盗キャラ設定には驚かされた!前作のニセ保呂草こと「秋野秀和」も大概だったけど、本物の保呂草も只者じゃない(こやつも偽物だったりするのかも?)。小鳥遊練無と香具山紫子の二人は、あまり掘り下げられていなかった気がするなあ。むしろ、林の方が目立ってたような気も。

そして今回もやっぱりあったヒロインのピンチ。お話を盛り上げるためだとは思うけど、毎度毎度ヒロインが無茶をして死にかけるのはS&Mシリーズから続く様式美なんでしょうかね(≧∇≦)b


★★★★☆

作中の序盤は、登場人物の名前と関係性を把握するのに少し苦労しましたが、全体像を把握できればお話の内容そのものは複雑ではなかったため、推理パートは読み進めやすくて楽しかったです。全体的には、人と人形、悪魔と神、操る者と信じる者、爽やかな避暑地とドロリとした人間関係の対比が印象的でした。

犯人が用いたトリックについては解決パート前にギリギリ何とか分かったものの、その他の謎については今回も解くことは出来ず、作中の探偵役の説明を読むことで気付かされました。ちょっと悔しい!

Vシリーズの2作目ということで、主人公たちの人間性や人格というのも少しずつ明らかになってきて、ミステリーの部分だけでなくドラマチックな部分でも作品の世界観が広がってきたので、次作を読むのが楽しみです!




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