保呂草潤平と邂逅した西之園萌絵が「メビウスの帯」構造の捩れ屋敷を舞台に発生した殺人&盗難事件に挑む!森博嗣の推理小説Vシリーズ第8作「捩れ屋敷の利鈍(ねじれやしきのりどん)」を読んだ感想。※記事中に表示を選択できる開閉式のネタバレ感想・考察を含みます。
作品情報
- ジャンル:ミステリー、推理小説
- 著者名:森博嗣
- サブタイトル:The Riddle in Torsional Nest
- 発売日:2005年03月15日
- 価格:572円(税込)
- ISBN-10:4062750333
- ISBN-13:978-4062750332
- 判型:文庫
- ページ数:272
- 初出:2002年1月 講談社ノベルス
- 参考:『捩れ屋敷の利鈍』(森 博嗣):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部
作品内容
あらすじ
秘宝「エンジェル・マヌーバ(天使の演習)」が納められた「メビウスの帯」構造の捩れ屋敷。その所有者である富豪に招かれた保呂草潤平と西之園萌絵が、密室状態の建物内で発見された死体と消えた秘宝の謎の解明に挑む。
作品紹介
森博嗣のシリーズ推理小説「Vシリーズ」の第六作。今作はシリーズ中の他作品と違い、時代設定と登場人物が異なっており、Vシリーズの「保呂草潤平」とS&Mシリーズの「西之園萌絵 」が主役となっている。
登場人物が少ないこともあり、どのようにして犯行が行われたのかという「ハウダニット(How done it)」が推理の肝となる。
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ネタバレ考察(開閉式)
タイトル回収
捩れ屋敷内における一方通行ギミックと死体の位置関係の謎、そして「エンジェル・マヌーバ」を盗んだトリックについては作中で西之園萌絵が説明してくれるので、メインの謎(盗難事件)については割りとスッキリ解決。
タイトルの「捩れ屋敷の利鈍」は、「メビウスの帯」構造という高度な技術を必要とする建築や屋敷内に一方通行の自動ロック機能を持たせるなどしながらも、人気のない盗まれやすそうなところに高価な美術品を置いていた理由&実は「エンジェル・マヌーバ」の鎖の接続部分を切断していた(されていた?)という、賢さと愚かさが表裏一体となったような捩れ具合や利鈍さを物語っていたなあ。
殺人犯は?
ログハウスで死んでいた「熊野御堂 譲(くまのみどう ゆずる)」と、捩れ屋敷で死んでいた「倉知 紀行(くらち のりゆき)」の殺人事件に関しては、作中で「熊野御堂 宗之(くまのみどう むねゆき)」と「熊野御堂 彩(くまのみどう あや)」の共犯で、実行犯は宗之であることが示唆されるが真相は不明。
ログハウスの密室ギミックをスムーズに実行するために二人でやったと考えることもできるけど、二人とも譲が仕掛けようとしたドッキリ(死体の振り)の仕掛け人(知らされていた)である可能性が高いから、倉知との三角関係も加味すると、倉知・宗之・彩の三人には犯行が可能だろうから決め手に欠ける。
あと、倉知の殺害については保呂草がやった可能性も否定しきれないのがモヤッとする。
時代設定
西之園萌絵が大学院生になり、国枝桃子も助教授となっているので、時代設定はS&Mシリーズの10作目「有限と微小のパン」以降と思われる。萌絵が犀川に電話を掛ける時に携帯電話を使っているあたり、持ち運びに苦労しないサイズの携帯電話と考えると時代設定は90年代あたりになっていそうだなあ。
そして、前作「六人の超音波科学者」を読んだあたりから紅子や林の心配をしていたが、エピローグで紅子がちゃんと登場して一安心。無事だったのねε-(´∀`*)ホッ
「紅子と萌絵の類似をさきに知った人物」=へっ君(犀川創平)と見て間違いないだろうから、これはもうしっかりとS&MとVシリーズが繋がった感じだなあ。今作中だと、紅子と保呂草は50歳前後?練無と紫子は40歳くらいになってるのかな~。
感想:★★★☆☆
シリーズ物としてはすごく楽しめたのだけど、推理小説としては曖昧な部分が多く、殺人事件の方がオマケ的な内容で若干スッキリしない印象でした。読んでる最中は、S&MやVシリーズの主要なキャラクター達の関係性ばかり気になって事件や推理が二の次になっていたのも大きいかも(;´∀`)
あと、練無と紫子がいないことで4人が集まった時のワチャワチャした掛け合いが見られなかったのも少し残念!
次作シリーズ9作品目の「朽ちる散る落ちる」は、7作目「六人の超音波科学者」の舞台である土井超音波研究所らしいので楽しみです。
- 前作感想:「六人の超音波科学者」
- 次作感想:「朽ちる散る落ちる」
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