森博嗣の推理小説Vシリーズの第6作目「恋恋蓮歩の演習(れんれんれんぽのえんしゅう)」を読んだ感想。記事の一部にネタバレ考察を含みます。
作品情報
- ジャンル:ミステリー、推理小説
- 著者名:森博嗣
- サブタイトル:A Sea of Deceits
- 発売日:2004年7月
- 価格:756円(税込)
- ISBN-10:4062748223
- ISBN-13:978-4062748223
- ページ数:456
- シリーズ:Vシリーズ
- 初出:2001年05月(講談社ノベルス)
- 参考:『恋恋蓮歩の演習』(森 博嗣):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部
作品内容
あらすじ
世界一周中の豪華客船ヒミコ号に持ち込まれた天才画家「関根朔太」の自画像。伝説的な美術品を巡って様々な思惑が交錯する中、航行中のヒミコ号船内で謎の銃声が響き、男性客の消失事件が発生する…。
作品紹介
森博嗣の推理小説シリーズ「Vシリーズ」の第六作となる作品。今作でも自称科学者の(子持ち)お嬢様「瀬在丸紅子」、探偵「保呂草潤平」、女装趣味の医学生「小鳥遊練無」、ボーイッシュ女子大生「香具山紫子」などのシリーズメインキャスト達が登場し、事件に巻き込まれていく。
前作「魔剣天翔」の続編的な色合いが強い作品となっているので、前作読後に読むのがおすすめ!
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ネタバレ考察(開閉式)
盗難&行方不明:スッキリ解決
銃声なども含めた羽村怜人の消失と、関根朔太の自画像盗難に用いられたトリックは、作中で語り手の保呂草によってきちんと説明されて伏線も回収されるため、読後感はスッキリ!
サブタイトル「A Sea of Decits(欺瞞の海)」のとおり、「怪盗保呂草、仏の大富豪クロウド・ボナパルト&各務亜樹良タッグ、大笛梨枝、鈴鹿親子」の4者による騙し合いになっていた。
今回は保呂草が一枚上手だったので上手くやり遂げたが、警察が例の自画像を船外に持ち出す方法について見当を付けたように(結果的には出し抜かれたが)、いずれは各務亜樹良もトリックに気付きそうだから、保呂草の身が危なそうだな~。
「保呂草=羽村」は、冒頭の保呂草の語りでの「名前」についてと、レストランでの「ピザ+ビール+煙草」、極めつけに「桜鳴六画邸」の内装なども含めた話題が出てきたので、事件の早い段階で気付く読者も多そう。
タイトル:「恋恋蓮歩の演習」
「恋恋」=未練の気持ちが強く恋慕の情を思い切れないこと」。「蓮歩」=(中国の故事「金蓮歩」から、蓮の花の上を歩くような)美人のあでやかな歩み」。
今作最大のミステリーは、密室や盗みのトリックではなく、登場人物たちがそれぞれに複雑な思いを持ちながらの"歩み"にあるように思えた。
保呂草の想い
関根朔太の自画像入手の足がかりとして利用するため大笛梨枝に近づいたのだろうけど、真偽が混じり合ったあの交際は一時とはいえ保呂草にとっては本物だったのかも。
また、(すぐ近くの阿漕荘に済んでいるため)正体がばれるリスクを孕んでいるのに敢えて梨枝との会話で「桜鳴六画邸」の話題を持ち出したのは、羽村怜人という人格のリアリティを増すための演出か、遠回しに無言亭や阿漕荘の友人を介して情報を入手するという意図もあったのかもなあ。
そして、紫子と保呂草の想いも気になるところ。紅子が敢えて練無を巻き込みながら無賃乗船に踏み切ったのは、紫子を心配した結果だったのか、或いは…。
殺人無し
今作は久しぶりに死人ゼロ!しかし、保呂草と祖父江七夏の格闘などスリリングな展開も一部あったので緊張感は結構あったな~。
保呂草と紫子の仲は進展するのか、保呂草は生き延びることができるのか、次作が楽しみ!
感想:★★★☆☆
序盤を読んでる最中にトリックの肝に気付いたため、その繋がりから解決パートのどんでん返しも予想できたので、謎解きや推理面での驚きは弱かったです。しかし、シリーズ物ならではの登場人物たちの関係性に深みが出てくるところなどが魅力的で楽しい作品でした。
本作は全体的に話の展開がのんびりしている印象ですが、Vシリーズの"お約束"を保呂草潤平が語る冒頭にもヒントが含まれているため、少し気を付けて推理しながら読み進めると謎を解きやすいかも!?
- 前作感想:「魔剣天翔」
- 次作感想:「六人の超音波科学者」
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