【推理小説感想】「月は幽咽のデバイス」 森博嗣

ムーンシティ

森博嗣の推理小説Vシリーズの3作目「月は幽咽(ゆうえつ)のデバイス」を読んだ感想。※本文の一部にネタバレ考察があります。

作品情報:月は幽咽のデバイス

主な内容

いくつかの異名を持ち、オオカミ男が出没するという噂も流れる豪邸を舞台に起こる不可解な密室殺人事件にVシリーズのいつものメンバーが遭遇。

衆人環視の密室には、何者かに頭を砕かれ引きずり回されたと思われる血まみれの死体が。その部屋は何故か床が水で濡れており、ガラスの破片も散乱していた…。




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ネタバレ考察(開閉式)

※ネタバレ注意(ここをクリックして開閉)※

プレジョン商会

第一章で紅子が「アート・ギャラリィ・プレジョン商会」について、「いえ、英語じゃないのね」と言った意味深発言。

「プレジョン商会」がアナグラムになっていて、ローマ字の「purejyonsyoukai(プレジョン商会)」を並べ替えると「horokusajyunpei(保呂草潤平)」に。怪盗保呂草(≧∇≦)/

オスカーの正体

作中では「獣」としか表記されない莉英のペットの正体は、「熊」か「大型犬(狼)」と思われる。どちらとも言えない微妙なところだなあ。

判断材料としては、「肉食の口、牙」、「歩く時に床に爪が当って音がする(=猫科ではない)」、「顔を上げると莉英とほぼ同じ背丈(=かなり大きい)」、「莉英のなぞなぞの答えが熊(ヒント?)」、「肉(餌?)を大量に購入している(根来機知瑛の情報)」、「解決パートで林がオスカーを見た時に思わず拳銃に手を掛けて警戒している(大型犬くらいじゃ流石にそこまでは?)」。

歌山佐季は事故死?他殺?

紅子は事故死という結論に至ったようだけど、何だかスッキリしない感じで他殺も有りそうな気配。エピローグで保呂草が「根本的な謎は残る」と言ってるのも気になるところ。

パーティで人が来ると分かっていたなら、万一に備えて、何故オーディオルームのエレベーターの大元の電源を切っておかなかったのか?(保呂草がエピローグで電源について語っている)。

そして、エレベーターの上げ下げに掛かる時間が「2分」なので、保呂草に目撃された後に「5分」くらい歌山佐季とオーディオルームにいた「岸田毅(きしだ つよし)には、事故に見せかけて佐季を殺害する事が可能だったかもしれない。

覚醒剤を使って朦朧とした佐季と一緒にソファに座ってエレベーターを動かし、6メートル下の床に頭から突き落として転落死させる(2分経過)。すぐにエレベーターを上げ(4分経過)、元の位置に戻ったら再度エレベーターを下げ始める、と同時にドアに向かえば5分以内に脱出が可能。

しかし、真相を確認する術はどの道ないし、隠しフロアの地下2階から何者か(篠塚宏邦、神戸和明なら可能?)がオーディオルームに侵入した可能性も考えられるから、紅子は事故と判断したのかもなあ。自殺の線もあるだろうし謎(´ε`;)ウーン…

キャラクター

今作は謎解きの面で少し物足りない印象があったけれど、阿漕荘に引っ越してきた森川素直や、姉の森川美沙が登場したのもあって、人間関係の幅が広がり賑やかになったのは面白かった。紅子とへっ君のやり取りも中々興味深かった(竹の話もヒントだったのかな?)。

他に気になるのは、紅子も保呂草も立て続けに事件に遭遇することに対してある種の「呪い」を感じ取っているようで、今後のお話にそれが具体的に絡んでくるのか楽しみ。因みに、今作の危機一髪担当の練無はアクションが良い感じだった!

あと謎なのは、時代設定。Vシリーズ1作目の「黒猫の三角」が1999年5月発売だけど、3作目に至っても一度も「携帯電話、パソコン、インターネット」などの用語が出てこないところをみると、S&Mシリーズよりも昔の話だったりするのかな?


★★★☆☆

読み返してみると作中にヒントが散りばめられていたのですが、最後までトリックも犯人も分からず完敗!

今回の作品は「密室で何が起きたのか?」という「What」が推理の主題になっているようでしたが、どうしてもトリック(How)と犯人当て(Who)の方に思考が偏ってしまい、最後まで苦戦してしまいました。

アンフェアではないものの「ちょっとズルくない!」と思ってしまうギミックに負けないよう「What」にも気を付けながら続編を読み進めたいと思います!




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