【推理小説感想】「朽ちる散る落ちる」 著:森博嗣

カルーセル

「地下密室」と「宇宙密室」の事件に挑む森博嗣のシリーズ推理小説「Vシリーズ」の9作目「朽ちる散る落ちる」を読んだ感想。※記事中に表示を選択できるネタバレ部分を含みます。

作品情報

作品内容

あらすじ

土井超音波研究所の地下にある密室で奇妙な状態の死体が発見される。一方、地球に帰還した有人衛星の乗組員が全員殺されているという事件も発生していた。

Vシリーズ第1作と第7作で登場した数学者「小田原長治」に導かれるようにして2つの事件に迫ることとなった瀬在丸紅子が事件の真相に迫るが…。

作品紹介

自称科学者の子持ちお嬢様「瀬在丸紅子」、探偵「保呂草潤平」、女装趣味の医大生「小鳥遊練無」、ボーイッシュな女子大生「香具山紫子」らアパート「阿漕荘」の住人を中心とする4人が数奇な運命により様々な事件に遭遇する推理小説シリーズの第9作。

シリーズ全10作中の9作目ということで、主要な登場キャラクターの人物像が掘り下げられ、様々な伏線も徐々に回収されていくのが見どころ!




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ネタバレ考察(開閉式)

※ネタバレ注意(ここをクリックして開閉)※

宇宙密室の真相

これは作中で示されるように、単に情報源のレポートが改変・捏造されたもので実際のところ殺人犯も宇宙船内に乗り込んでいて生還していたというもの。情報が周防教授からのレポートについての話を聴くという伝聞のみになっていて、十分な手がかりが与えられないのがポイントだろうなあ。

地下密室の真相

死んでいた「藤井徳郎」は自殺。地下の巨大な遠心装置で発生させた重力加速度を利用しての飛び降り自殺だったというオチ。7作目では特にトリックと関係なかった土井超音波研究所の配置図が今作では重要なヒントになっていたが見逃したなあ(ノ∀`)アチャー

地下室の位置と横穴を、配置図の円形と組み合わせて考える事ができればトリックを解けたかも!

へっ君ピンチ?

5章で図書館に出かけた「へっ君」が行方不明になる騒動はかなりドキッとした。しかし、へっ君のいじらしい気持ちと、紅子の狼狽ぶりが興味深かった。

シリーズ1作目の「黒猫の三角」では「私はね…、林のためなら、息子を殺すことができます。」と言っていたのに「あの子の身に何かあったら、私にはもう…、何もなくなってしまうわ」という発言からは紅子の複雑さが垣間見えた。

小田原長治

エピローグで纐纈の屋敷を訪ねた保呂草と練無が見た絵の下りからすると、結局のところ土井超音波研究所に紅子を送り込んだ「小田原長治」の意図は娘である「纐纈(藤井)苑子」に会いたい(助けたい)というシンプルなものだったように思える。

それにしても紅子・保呂草・小田原・苑子によるラスト付近のお芝居の場面を想像すると傑作!林と七夏は無駄だと分かっていながらも小田原近辺を捜査をするのだろうけど、結局は空振りに終るんだろうなあ。


感想:★★★★☆

作中のある事件についてはアンフェアじゃないか、とも思いましたが本格推理小説を謳っているわけでも無いので、まあこんなものなのかなというところでした。

地下密室のトリックは解決パートを読む前に解くことができませんでしたが"らしい"内容だったので、謎解きを実践する下りは見ていてワクワクしました。推理小説は謎を解けなくても解決パートでスッキリできるのが気持ちいい(≧∇≦)b

次作はいよいよVシリーズ最終作となるので楽しみです!




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