【哲学本感想】「永遠平和のために」 イマヌエル・カント

デイジーの花

「戦争と平和」について書かれた18世紀ドイツの哲学者イマヌエル・カントの著作「永遠平和のために」を読んだ感想(池内紀[訳]の集英社版)。

作品情報

永遠平和のために
イマヌエル・カント
集英社

作品内容

「永遠平和のために」

「永遠平和のために」は、1795年に出版された政治哲学の本。「永遠平和(=その場凌ぎの一時的ではない"永遠の平和")」を実現するための国のあり方や国同士の接し方などについての理念が書かれている。

カントの代表作「純粋理性批判」、「実践理性批判」、「判断力批判」などに比べると、こじんまりとして短く、読みやすい内容になっているらしい。今回読んだ「訳:池内紀」の集英社版だとページ数「120」のうち、「本文2章+補説2+付録」からなる本編は合計して「31ページ」と小冊子のような分量になっている。

本文は全訳で、補説と付録が抄訳となっている事を含めても、本来読みやすいように書かれた本のよう。

構成紹介

本書の構成内容は、カントの略歴紹介が「3」ページ、本編から抜粋された言葉と写真をコラボした見開きページが「44」ページ、本編(本文+補説+付録)が「31」ページ、翻訳者「池内紀」による解説が「23」ページとなっている。

写真とのコラボ見開きページは、載せられているカントの言葉と写真のイメージや関連性が理解りづらいものが多くて、いまいちな印象だった。

しかし、翻訳者の「池内紀」が書いている解説のページは、カントが生まれ育ち亡くなるまで暮らしたプロイセンの東プロシア地域や都市「ケーニヒスベルク」の歴史と18世紀にヨーロッパで繰り返された戦争などについて触れられており、出版当時(1795年)既に71歳だった老哲学者のカントが小難しい「哲学書」ではなく読みやすい「平和論」の本を書いた経緯についても説明されていて興味深かった。




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感想:★★★☆☆

「ハーバード白熱教室講義録」を読んで哲学本にも少し興味が湧いたので読みやすそうなカントの本を試してみましたが、そこそこ面白かったです。

「永遠平和のために」で語られる平和論には、実現性に疑問を感じましたが、これらの平和を推進する理念が無かったら世界はきっと今以上に戦乱の嵐が吹き荒れているでしょうから、必要性については納得感がありました。

本文冒頭の序文に書かれている政治家や為政者に向けたと思われる皮肉っぽい前置きは、繰り返される戦争に辟易した老哲学者の止むに止まれぬ気持ちが滲み出ているようでした。

補説と付録が抄訳されているため翻訳や構成の面で賛否ある本のようですが、カントの平和論の理念を現代の状況に即した視点で解釈しやすくなる利点もあるので、これはこれで中々読みやすくて面白い本だと思います。

永遠平和のために
イマヌエル・カント
集英社



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